ZONE A パネル一覧

A1ようこそ、自動運転社会の最前線へ

ようこそ、自動運転社会の最前線へ


戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)は、2014年に始まった研究開発から実用化・事業化までを目指す産学官連携、府省連携のプロジェクトです。

第1期のSIP自動走行システムでは、自動運転に必要な高精度3次元地図の構築と配信や、車両のサイバーセキュリティ評価手法の確立などに取り組みました。2018年に始まったSIP第2期は、テーマ名を「SIP自動運転(システムとサービスの拡張)」に改め、技術開発中心のフェーズから自動運転の実用化に向けたシステムの進化とサービス拡張のフェーズに移行。東京臨海部及び中山間地域で、様々な事業者や自治体等参加による実証実験等を重ね、社会実装に向け取り組んでいます。

①交通環境情報の構築と発信

“ダイナミックマップ”とは、高精度3次元地図情報に、交通環境情報など動的な情報を付加したもので、自動運転のキーテクノロジーのひとつに挙げられました。例えば地図データひとつをとっても車線はいくつありますか、右折レーンの有無など、車線にもさまざまな属性があります。そして、渋滞情報や工事情報など、電光掲示板に表示しているような外的な情報も取り込む必要があります。信号など時々刻々変化する情報も統合していこうというのがダイナミックマップの概念です。ただし、高精度な地図があるだけでは自動運転は不可能です。カメラ、レーダー、レーザースキャナー、で得た車載センサー情報と高精度3次元地図情報(標識、車線リンク、区画線、路側縁)を比較して位置を検出する“自車位置推定”が重要な要素となります。これらとGPSデータなど地図外の情報を使って補正を行い、自車位置をより正確に把握することが自動運転には重要になります。今後は、目の前の信号機情報をはじめ、例えば管制センターの道路交通情報など、さまざまな情報を統合してプラットフォーム化を目指しています。また車の走行した軌跡から道路の構造の変化を感知して、その情報から地図更新のヒントを得る取り組みも始まっています。さらに国際展開としては、欧米のITS関連の調査団体などと情報共有をして、フォーマットの統一化を進めています。将来的には自動運転のみならず、災害や防災時の情報収集や農業への活用など、データの広範な利活用を想定しています。

②仮想空間での安全性評価環境の構築

自動運転にとって重要なものといえば、カメラ、ミリ波レーダー、ライダーなどのセンサー。しかし、それらの性能評価は、実車走行試験に頼っているのが現状です。そこでメーカー各社が横連携しながらセンサーの正確な評価が行えるプラットフォームの構築を目指すプロジェクト「DIVP(Driving Intelligence Validation Platform)」が始まりました。トヨタ自動車でVSCの開発などシャシー制御のエンジニアとして活躍したのち、現在神奈川工科大学で教授を務める井上秀雄氏の研究室を中心に、立命館大学などアカデミアと、カメラの日立オートモティブシステムズ/ソニーセミコンダクターソリューション、ミリ波レーダーのデンソー、ライダーのパイオニアというセンサーメーカーに、三菱プレシジョンや日本ユニシス、SOKEN、SOLIZEを加えた2大学+8企業、計10団体によるコンソーシアムが取り組んでいます。SIP自動運転がスタートしておよそ3年。DIVPプロジェクトは折返し地点に到達しました。リアル空間をサイバー空間で再現することを試み、3つを一緒にシミュレーションできる“センサー・フュージョン”の国際標準化を目指しています。

③サイバーセキュリティ(IDS)の評価手法の確立

日本は世界でも有数の安全な国と評価されています。治安が良いということは、裏を返せば防犯意識は低くなる傾向にあると言えるでしょう。それは現実世界だけでなく、サイバー空間においても同様です。CASE戦略のC(コネクテッド)が進み、クラウドとリンクしたデータの活用や車車間通信などクルマが外部と繋がれば繋がるほどサイバーセキュリティのリスクにさらされています。危機意識の高いアメリカでは、1998年クリントン政権下でアイザック(ISAC:Information Sharing and Analysis Center)というセキュリティ情報共有組織が、さらに2015年には、自動車関連情報に対するサイバー攻撃の脅威や潜在的な脆弱性に関する知見を共有し、分析するための安全なプラットフォームを確立することを目的として、Auto-ISAC (The Automotive Information Sharing and Analysis Center)が設立されています。日本でも2019年の道路交通法および道路運送車両法の改正によって、通信によるソフトウェアの大規模なアップデートが可能になりました。そうした流れをうけ、SIP自動運転はサイバーセキュリティ対策として、ハッキングの足跡を探す侵入検知システム(IDS―Intrusion Detection System)の調査研究プロジェクトを発足。また2021年2月には、日本自動車工業会(JAMA)に所属する自動車メーカー全14社と日本部品工業会に所属する主要サプライヤー7社が発起人となり、一般社団法人Japan Automotive ISAC(J-Auto-ISAC)が設立されました。SIP自動運転の評価法で泥棒の足跡をみつけ、J-Auto-ISACで情報共有し防御防災に生かすことを考えています。いま日本の自動車産業全体で“つながるクルマ”を守る基盤づくりが進められています。

④地理系データの流通ポータルの構築

リアルとサイバー空間を高度に融合させた新しい社会、 Society5.0では、新しいデータ連携の仕組みが求められ、なかでも人やモノの動きをとらえることができるモビリティ分野の“交通環境情報”は各分野での活用が期待されています。そのニーズに応えるために、交通環境情報を活用したデータやサービスを組み合わせることで、新しい価値やサービスを創出し、社会課題を解決するための仕組みを構築したポータルがMD communet(コミュネット)です。 モビリティ分野を中心に、これまでの地図や交通情報に加え、高精度3次元地図やリアルタイムの車両情報などを一元的に集約し、企業が新しいビジネスにチャレンジする際に、データの検索や発見など、課題や解決方法のマッチングをサポートし、MaaSや物流、インフラ管理など、広範囲での活用を可能にするものです。一例として、ナビゲーションでは位置情報や公共交通機関の運行情報をベースに、天候やリアルタイムの交通状況にあわせた移動手段の提案をはじめ、使用者の趣味や興味を反映したオリジナルの観光プランに加え、属性にあわせてスムーズかつ混雑を回避して移動できるルートなどを提供。Society5.0の実現に向けて、新しい価値やサービスを創出する役割を担います。


以上の4つのテーマを中心としながら、その他のテーマも含めこれまでの取り組み成果をまとめました。 皆さまの興味あるテーマについて、“自動運転の現在地”を感じていただければ幸いです。

SIP自動運転 プログラムディレクター
葛巻清吾



関連するキーワードから探す

交通環境情報の構築と発信 仮想空間 安全性評価環境 サイバーセキュリティ 侵入検知システム 流通ポータル

SIP自動運転は、引き続き人文・社会科学の視点も含む総合知をフル活用して、Society5.0の具現化として社会構造を変革する自動運転社会の実現と、その先にある一人ひとりの多様な幸せの実現に貢献していきたいと思います。

この記事を見ている方はこちらも見ています